保険というと、多くの人は「安心を買うもの」と考えます。
でも、私がFPとしてこれまでの相談を見てきて感じたのは、安心は数字や商品だけでは手に入らないということです。
確かに保険は、確率や損失を数値化して経済的リスクを軽くする仕組みです。
しかし、入ったからといって全員が安心できるわけではなく、逆に解約した途端に不安で眠れなくなる人もいます。
ここで見えてくるのは、「安心」は買うものではなく、感じるものだという事実です。
保険は、安心を届けてくれる存在ではなく、安心を感じるためのきっかけにすぎません。
安心は数字だけでは測れない
車両保険に潜む「あるある」の感情
たとえば車両保険があります。相手の賠償ではなく、自分の車の損害を補償する保険です。
「もう古い車だからいいかな」「事故の確率は低いし」「保険料がもったいない」
このような合理的な理由で外す人は多いです。まあまあ保険料が高いですからね。
でも、車両保険を外した直後に事故が起きると、頭で考えた合理性はあっという間に吹き飛びます。
「やっぱり外すんじゃなかった」「なんで今なんだ…」
そう思わずにはいられません。
これは、守られていた感覚を手放したことで、無意識に注意力が下がったり行動が変わった可能性もあるからです。
数字だけでは説明できない、人間らしい心の揺れがあります。
入院保険の不要論とその落とし穴
最近は「入院保険は不要」と考える人も増えています。
高額療養費制度や貯蓄でカバーできるから、それでOKという考え方です。
入院した時の経済的な損失より、毎月の保険料負担の方が自分にとってデメリットと感じるんですね。
でも、実際に解約した途端に入院するケースもあります。
このとき大切なのは、制度的に必要かどうかではなく、
「自分は何に不安を感じているのか」「どんなときに安心を求めているのか」という感情の棚卸しです。
数字だけで判断すると、心との間にズレが生まれ、結果として安心を失うことがあります。
FPの役割は安心の再設計
FPの仕事は、保険を売ることではありません。実際に、私は保険商品の取り扱いはありません。
保険は手段のひとつであるということ。
本質は、「その人にとっての安心とは何か」を共に探し、形にすることです。
安心は数字だけでは語れません。
価値観、過去の経験、家族構成、そして迷子感――
これらを丁寧に紐解くことで、初めて本当の安心にたどり着けます。
私がFPとして日々心がけているのは、相談者の心の声に耳を傾け、行動や数字だけでは見えない部分を整えること。
安心の地図を描くことから、人生の選択肢は広がっていくのです。
まとめ
「安心」は築くもの、そして自分ごとにするもの
車両保険も入院保険も、数字だけで見ると不要に見えることがあります。
でも、その裏には「守られている感覚」や「不安を抑える仕組み」が隠れています。
安心は、保険という商品で買えるものではありません。
それは、自分の価値観に沿って、感情と行動のバランスを整えながら少しずつ築いていくものです。
だからこそFPは「安心の再設計者」。
数字を並べるだけではなく、心の声を聴き、未来の地図を共に描く存在です。
- あなたは今、安心を数字だけで測っていませんか?
- 保険を外したとき、不安になった経験はありませんか?
- まずは、自分の“安心の棚卸し”から始めてみましょう。
迷ったときや不安なときは、FPに一緒に整理してもらうのも一つの方法です。
安心は与えられるものではなく、自分で感じ、育てていくもの。
私は、皆さんがその安心を手にできるよう、そっと導く存在でありたいと思っています。
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Wrote this article この記事を書いた人
福田 智司
▶独立系ファイナンシャルプランナーとして、相談業務、セミナー講師などで活動しています。 ▶FBCラジオ ラジタス 第一木曜日 10:50~ 「FPふくちゃんのお金に関するエトセトラ」レギュラー出演中 福井で唯一?のラジオFPです ▶FPでIFAというポジションを活かした相談が得意 節約だけが家計見直しじゃない!を念頭に置いた相談を心掛けています。 ▶法人向けに企業型確定拠出年金の導入サポートを推進しております