「そろそろ老後のことを考えないといけないのかな」
50代前後になると、そんな言葉がふと頭をよぎる瞬間が増えてきます。
きっかけはさまざまです。
ねんきん定期便が届いたとき
健康診断の結果を見たとき
親の介護や相続の話が出たとき
ニュースで年金問題の話題を見たとき
特別な出来事がなくても、
「今のままで大丈夫なのかな」と、
なんとなく不安になることもあります。
老後を考え始めること自体は、とても自然で、前向きなことです。
でも実際には、考え始めた瞬間から、不安のほうが大きくなってしまう人が少なくありません。
情報を集めるほど、不安が増えてしまう理由
いざ老後のお金を考えようと思い、
ネットで検索してみると、たくさんの情報が出てきます。
・老後資金はいくら必要か
・平均寿命までにかかる生活費
・年金だけでは足りない
・このままだと老後破綻する
YouTubeやSNS、本や雑誌でも、刺激的な言葉が並びます。
どれも一理ある話です。間違っているわけではありません。
それでも、不安が増えてしまうのはなぜか。
それは、多くの情報が「前提条件」を省いたまま、いきなり数字の話をしているからです。
誰の話なのか
どんな暮らしを想定しているのか
いつから、いつまでの話なのか
ここが整理されないまま数字だけを見ると、
「自分も同じだけ必要なのでは?」
「全然足りていないのでは?」
と、気持ちが追い込まれてしまいます。
最初に整理してほしいこと①
「いつから、どんな老後をイメージしているか」
老後という言葉は便利ですが、じつはとても曖昧な言葉でもあります。
65歳から老後だと思う人もいれば、
70歳までは現役だと考えている人もいます。
仕事をきっぱり辞めたい人
体力が続く限り働きたい人
収入は減っても、人とのつながりは持ちたい人
さらに言えば、老後はひとつの期間ではありません。
元気に動ける時期
少しペースを落とす時期
できるだけ安心して過ごしたい時期
このすべてを「老後」という一言でまとめてしまうと、お金の話がどうしても大雑把になります。
まずは、「自分はどんな老後をイメージしているのか」を言葉にしてみること。
完璧でなくて構いません。
途中で変わってもいいのです。
最初に整理してほしいこと②
不安の正体は「お金」だけではない
相談の場で、
「老後のお金が不安です」と言われる方は多いですが、
話を聞いていくと、実はお金以外の不安が混ざっていることがよくあります。
・健康を保てるかどうか
・一人になったとき、どうなるのか
・家族に迷惑をかけないか
・判断力が落ちたとき、誰が支えるのか
これらは、数字では解決できない不安です。
でも、不安を感じている本人にとっては、すべてがひとまとめになって
「老後のお金が不安」という言葉になっていることが多いのです。
ここを切り分けずに、いきなり資産額や運用の話をすると、どうしてもモヤモヤが残ります。
老後のお金の不安は、人生の後半をどう生きるか、という不安と深くつながっています。
最初に整理してほしいこと③
「足りるか」より「どう使うか」
老後の話になると、どうしても「いくら貯めるか」「どれだけ増やすか」
という話が中心になります。
もちろん、それも大切です。でも、老後は若い頃と同じ考え方では進みません。
老後は、お金を増やし続ける時期というより、使いながら守っていく時期。
「いくらまで増やせるか」より、
「どんなことに使いたいか」
「何にお金を使えると安心できるか」
ここが見えてくると、必要なお金の考え方も自然と変わります。
貯める話ばかりで疲れてしまうのは、ゴールが見えないまま走っているからかもしれません。
整理ができると、不安の質が変わる
老後のお金を考えたからといって、不安がすべて消えるわけではありません。
でも、
「よく分からない不安」
「なんとなく怖い不安」
が、
「向き合える不安」に変わることはあります。
それだけで、気持ちはずいぶん楽になります。
数字を出すのは、そのあとで大丈夫です。
順番を間違えなければ、老後の話はもっと落ち着いて考えられるようになります。
おわりに
老後のお金には、ひとつの正解があるわけではありません。
だからこそ、正解を探す前に、整理することが大切だと思っています。
数字の前に、気持ちと暮らしを整える。
老後のお金は、そこから始めても遅くありません。
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【希望と迷子編】お金の悩みを未来から整理する
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Wrote this article この記事を書いた人
福田 智司
▶独立系ファイナンシャルプランナーとして、相談業務、セミナー講師などで活動しています。 ▶FBCラジオ ラジタス 第一木曜日 10:50~ 「FPふくちゃんのお金に関するエトセトラ」レギュラー出演中 福井で唯一?のラジオFPです ▶FPでIFAというポジションを活かした相談が得意 節約だけが家計見直しじゃない!を念頭に置いた相談を心掛けています。 ▶法人向けに企業型確定拠出年金の導入サポートを推進しております