「貯蓄から投資へ」を推進する「資産所得倍増プラン」で本当に資産所得を倍増できるのか?

「貯蓄から投資へ」を推進する「資産所得倍増プラン」で本当に資産所得を倍増できるのか?
この記事はだいたい 5 分前後で読めます。

令和4年11月25日、資産倍増分科会において「資産所得倍増プラン」が取りまとめられました。

基本的な考え方は、家計に眠る現預金が投資に回っていくように後押しをすることです。日本の現状は、家計金融資産2000兆円の半分以上が現預金で占められており、株式・債券・投資信託に投資をしているのはそのうち244兆円ということです。

さて、貯蓄から投資へを推進していく空気感が高まっていく中、資産所得倍増プランが提示されました。この流れに乗って、私自身も倍増したいところですが、本当にそうなのか確認していきたいと思います。

資産所得倍増プランの目標とは

資産所得倍増プランには、具体的な目標が掲げられています。確認してみましょう。

① NISA口座

一般・つみたてNISA口座は現在約1700万口座ありますが、その総口座数をこれからの5年で3400万口座へと倍増することを目指します。

※私見 単純に口座を倍増したいということですね。資産所得倍増するかどうかは不明ですが、投資に取り組む人は倍増しそうです。

② 投資額

NISA口座を活用して投資をしている額は約28兆円あります。この投資額を5年間で56兆円へ倍増させていきます。

※私見 まさしく貯蓄から投資へを推進していくことになります。投資額が倍増しても、資産所得が倍増するかどうかは別かもしれませんが・・・

③ 目標の実現

これらの目標を達成することで、資産所得が倍増するよう政策対応で後押ししていきます。

※私見 投資をこれから始める人にも活用しやすいよう制度設計ができることを期待します。

資産所得倍増プランの方向性

なかなか「貯蓄から投資へ」が進まない要因が金融庁の調査から見えてきます。

投資をしない理由として多いのは

  1. 余裕資金が無いから(56.7%)
  2. 資産運用に関する知識がないから(40.4%)
  3. 購入・保有することに不安を感じる(26.3%)

となっています。

この気持ち理解できます。その通りだと思います。

人は投資で損をしたくないし、相談の中でも家計に余裕がないという話もよくあります。この分科会でも話し合われており、みんなに優しい(易しい)制度設計が重要であること、少額でも投資をしやすい環境の整備、そして不安を払拭できるよう中立的なアドバイザー制度の整備が必要であることを方向性として打ち出しています。

そして、資産所得を倍増するための7本の柱が提示されました。

  1. 家計金融資産を貯蓄から投資にシフトさせるNISAの抜本的拡充や恒久化
  2. 加入可能年齢の引き上げなどiDeCo制度の改革
  3. 消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設
  4. 雇用者に対する資産形成の強化
  5. 安定的な資産形成の重要性を浸透させていくための金融経済教育の充実
  6. 世界に開かれた国際金融センターの実現
  7. 顧客本位の業務運営の確保

いくつかピックアップして解説していきたいと思います。

① 家計金融資産を貯蓄から投資にシフトさせるNISAの抜本的拡充や恒久化

大きなポイントは「恒久化」です。

現状は、一般NISAは2024年に新NISAに見直され、2028年まで投資可能期間が設定されています。つみたてNISAは2037年までの投資可能期間が2042年に延長されています。いずれにしても期限がありました。

この期限を無くし、いつまでもNISA制度を活用できるように「恒久化」されるようになります。

長期投資を勧めているのに期限が設定されていたので、その期限が無くなることは必然だと考えます。

そして、利便性向上のために、年間の投資上限額の引き上げになりそうです。今回の取りまとめ案には具体的な上限額は記載されていませんが、それこそ倍増するかもしれません。つみたてNISAについては12ヶ月で割り切れる額になりそうな感じです。現在は毎月33,333円が上限でなんとも割り切れない(笑)

今後5年間で、NISA口座の倍増、投資額の倍増を目標にしていますが、それで投資している人の資産所得が倍増するのは直結しません。そのためには、後述する中立的アドバイザーの存在がポイントになってきそうです。

追伸

2024年の一般NISA見直しは、2階建て制度でややこしいということで不評なんです。その見直しも見直されることになりそうです。

② 加入可能年齢の引き上げなどiDeCo制度の改革

2022年にiDeCoの加入年齢が65歳に引き上げられました。それをさらに70歳まで引き上げるプランです。

iDeCoの税制優遇はそのままです。

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iDeCoの加入者は2017年の43万人から2022年では239万人まで増加しています。そいて、iDeCoをきっかけに投資を始めた人が増えていることも事実としてあります。

iDeCoを活用しやすくすることで投資の世界へ入ってくる人が増えることになります。

iDeCoは立場によって掛け金の上限が設定されています。企業年金ありの会社員、公務員は月12,000円が上限なのですが、20,000円に引き上げされます。

加入期間、上限額が引き上げになり、対象者と投資額は増加しそうです。ただし、iDeCo加入に関しては、公的年金加入者であることが条件なので、70歳まで働いて年金保険料を納める必要があります。

ライフプランを作成し、いつまで働くのかキャリアプランも一緒に検討する必要が出てきます。

③④⑤中立的なアドバイザーの存在価値

③消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設
④雇用者に対する資産形成の強化
⑤安定的な資産形成の重要性を浸透させていくための金融経済教育の充実

7本の柱のうち3項目でアドバイザーの存在について設けられています。

証券や保険など金融業界で結構たたかれた時代がありました。お客様を置いてけぼりにして、営業活動としてやり過ぎていたのではないかということです。

金融庁もフィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)の重要性を明確に打ち出し、その姿勢を業界に求めています。消費者が中立的なアドバイスを受けることができるように仕組みを整えていくようです。

その中立的なアドバイスを、従業員に提供できるよう企業に働きかけることになりそうです。企業にとっては従業員の定着化につなげる狙いがありますし、従業員にとっては勤務先企業が機会を提供してくれることで満足度が向上します。そして金銭的な心配事が減少すれば安心化にもつながっていきます。

さらに、金融経済教育推進機構(仮称)を新設予定で、国民に資産形成の重要性を広く伝えていくことになります。

資産所得は倍増するのか?

資産形成に取り組みやすくなるように、制度や体制が整っていくようです。

ただ、それで資産所得が倍増するのでしょうか?

投資をする人、投資額は倍増するかもしれません。それが資産所得の倍増に直結はしないでしょう。そこには正しい知識も必要だと思いますし、信頼できるアドバイザーの存在も必要になってきます。

iDeCoもNISAも、決して儲かるシステムではありません。あくまで投資に活用できる仕組みです。このことを理解して仕組みを活用し、長期で積立投資を実践すれば資産所得倍増に繋がっていく可能性が大きくなります。

結論としては、7本の柱だけでは資産所得倍増とはならないが、資産所得倍増となる下地はできる、ということになると思います。

まとめ

これから、金融業界はざわざわするかもしれません。営業攻勢をかけるタイミングになりそうです。

資産所得倍増プランが出たからといって、投資に取り組む人が全員、資産所得が倍増するわけではありません。

ただ、この貯蓄から投資への流れ、そして、資産所得倍増プランにおける制度の整備を利用することで、資産運用に取り組むことはお勧めします。情報を取りやすくなってくると思いますし、やり口が酷い営業も減少すると思いますので、資産運用を始めてみましょう。

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Wrote this article この記事を書いた人

福田 智司

▶独立系ファイナンシャルプランナーとして、相談業務、セミナー講師などで活動しています。 ▶FBCラジオ ラジタス 第一木曜日 10:50~ 「FPふくちゃんのお金に関するエトセトラ」レギュラー出演中 福井で唯一?のラジオFPです ▶FPでIFAというポジションを活かした相談が得意 節約だけが家計見直しじゃない!を念頭に置いた相談を心掛けています。 ▶法人向けに企業型確定拠出年金の導入サポートを推進しております

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