相続で揉めたくない!FPが教える遺産分割、相続税対策、認知症対策 1/3

 人はいつか亡くなる、やがて亡くなるタイミングが来る、これは仕方がないことです。普遍的なことです。

 ということは、「相続」は誰にも起こりうることになります。しかも、誰もが経験値が高くないという問題もあります。

 そこで、相続について揉めないよう準備するために知っておくべき対策を、お伝えします。大きく3つありますから、ひとつづつ3回に分けてお伝えしていきます。遺産分割ならぬブログ分割です。

相続を争族にしないための対策3選

一つ目、遺産分割対策

 相続が「争族」になる遺産分割についてです。揉めないように準備することが重要ですが、実際に裁判になるほど揉めることが多くあります。

二つ目、相続税対策

 これは、相続税のために納税資金を準備すること、相続税が過大にならないよう節税対策をするという2つの対策があります。

三つ目、認知症対策

 長生きのリスクといわれる認知症。認知症になるとできなくなることがあります。契約行為や資産管理が難しくなります。介護費用のために準備しておいた預金も使えなくなる可能性があります。認知症を発症した場合でも対応できるよう準備する必要があります。

それでは、ひとつづつ見ていきましょう。

遺産分割対策

 遺産分割とは、その名の通り遺産を相続人で分割して受け取ることです。遺産分割トラブルの話をすると、「揉めるほど遺産がない」という会話になります。確かに、ニュースになるような相続トラブルは資産家で億単位の話が多いですね。

 遺産分割で揉めるのは資産家ばかりなのでしょうか?ここで、「司法統計年報 3家事編(令和5年度)」を見てみます。

 52表を確認すると、令和5年の遺産分割事件の総数は、7,234件となっています。そのうち、1000万円以下が2,448件(33.8%)、5000万円以下が3,166件(43.7%)という統計となっています。つまり、5000万円以下の遺産分割トラブルが、5614件となり、全体の77.6%を占めています。

 たとえば、父親が亡くなって、母親と子ども2人の計3人が相続するケースを考えてみます。相続税の基礎控除で3000万円、相続人一人当たり600万円で3人で1800万円、合計4800万円までは相続税は必要ありません。つまり、相続税がかからない世帯が裁判になるほど揉めていると言えます。それ以前に、基礎控除3000万円の範囲内でしたら、相続税は非課税です。

 遺産分割トラブルは資産家だけの話ではありません。資産家の遺産分割で、あっちが多くてこっちが少ないという揉め方もあるでしょうが、資産家でなくとも相続人が複数存在すると自宅不動産は分割しにくいので揉めることとなります。

自宅不動産で揉める

 遺産を分割するのに、不動産はなかなか難しい。すぐに売却できないかもしれないし、思った通りの金額で売却できないかもしれない。また、配偶者が住んでいて売却できないということもありそうです。

 父親が亡くなって相続が発生し、2人の子どもは独立して別に居住している場合、母親が住んでいる自宅不動産を売却しないと、遺産を遺産として受け取ることができない可能性もあります。母親に立ち退き要求は出来ませんからね。子どもである兄弟姉妹で相談ができて、母親が住んでいる間はそのままでいいよ、今は遺産は無くてもいいよと、合意が得られれば問題ありません。

 もし、ここで権利というか、法定相続分を強く主張すると揉めることになります。自宅を売却して遺産分割するという主張をすると揉めます。自宅不動産の評価が1000万円以下だとしても揉めます。

相続人で仲良く共有はNG

 自宅不動産は売却などに困難さがあるため、いっそのこと相続人である兄弟姉妹で共有にしましょうかと妥協案のようにする場合があります。

 不動産の共有はお勧めしていません。むしろ、避けてくださいという話をします。不動産の共有は問題を残すだけで解決したとは言えません。

 たとえば、90坪の土地があり相続人3人で共有した場合、30坪ずつ所有するという意味ではありません。不動産の所有権が1/3ずつあるという意味です。すると、売却するにも、売却価格に了承するのも全員一致しないといけません。そうなると、面倒くささが残りますよね。

 相続人である兄弟姉妹がこの先もずっと仲良くできる保証はないし、不動産を売却した資金が必要なタイミングもそろわない可能性がありますし、共有することで解決したように見えますが、問題を先送りしただけになります。

他にもある遺産分割トラブル

 個別案件となる遺産分割トラブルですから、まったく同じ内容ということも少ないでしょう。それでも、似通った事例を知っておくことで対策、対応できると思います。そこで、どこかで聞いたような事例をいくつかご紹介しようと思います。

特定の遺産にこだわりを持つ

たとえば、このような事例

  • 被相続人である父親が骨董品を収集しており所有していた
  • 次男は、その骨董品をすべて相続したいと主張
  • 長男、長女は売却して分配したいと考える

 骨董品ではなくとも、ありそうなケースですね。それが古民家のような自宅かもしれないし、クラシックカーかもしれないし、時計のコレクションかもしれません。

【解決策として】

  • ひとまず、鑑定士に骨董品を評価してもらう
  • 次男が骨董品を相続する代わりに、ほかは放棄する
  • 一部売却して、長男長女に分配する

 解決策はあると思います。ほかにもありますし、組み合わせて合わせ技のように解決することもあります。こだわりが強くて、譲らないとなると、そのまま裁判までいくかもしれません。

借金などマイナスの遺産がある

 借入金が残っていて、プラスの遺産もあるがマイナスもあり、どのように分割、負担するかでトラブル

  • 被相続人が、それなりの大きさの借入金があった
  • プラスとマイナスがあり、誰がどの程度負担するのか決まらない
  • 放棄する相続人もあり、マイナスの負担が大きくなりそう

 借入金などのマイナスの遺産もあります。全体としてプラスが大きく遺産を分割できても、マイナスも相応に負担すると、なかなか了承できない場合もありそうですよね。

【解決策として】

  • 弁護士に入ってもらい、借金の相続について法的なアドバイスをもらう
  • 相続人同士で、とことん話し合う
  • どうしても無理となると、家庭裁判所に調停を申し立てる

 解決策といいながら、これは解決していない・・・解決する方法の案内文でした。すみません。

遺産分割トラブルの対策とは

 遺産分割トラブルは、どのご家庭にも発生する可能性があります。遺産の多寡は関係ありません。感情が大きく占めるかもしれません。

遺言書の作成

 相続人が事前に準備しておくことで、意思をはっきり伝えることができます。誰にどの遺産を渡すか明確にすることで、トラブルを未然に防ぐ効力があります。法定相続分にとらわれずに分割することができます。

 遺言書の内容が不明確ではないか、誤解される表現はないか、注意が必要です。揉め事をなくすための遺言書で揉め事の火種になっては大変です。

 また、遺産の分割で偏りすぎて、遺留分を侵害していないかも注意が必要です。揉める火種が残ります。

 遺言書の作成において事前に弁護士、司法書士の先生に相談できるといいですね。ファイナンシャルプランナーは、遺言書の内容についての相談はできません。一般的な話はできますが、「あなた専用の遺言書を作成」「内容について助言する」ことはできません。行政書士も同様で原稿を作成、形式を整えることはできますが、内容の相談は出来ません。

生前贈与の活用、相続時精算課税の活用

 どちらにしても制約はあるのですが、相続が発生する前に、遺産分割で揉める前に渡してしまおうという方法です。相続時点での遺産総額を減少させる意味合いもあります。

生前贈与(暦年贈与)の活用

 贈与すると税金がかかるのですが、年間110万円までは非課税で贈与することができます。ひとりにつき110万円までなので、複数人に贈与すると大きく遺産が減少します。贈与する対象が一人しかいない場合でも年数をかけて渡すことができます。10年で1100万円、20年で2200万円を非課税で贈与することができます。

 ただし、相続が発生した場合、贈与した財産をさかのぼって相続税の計算に取りこむルールがあります。2023年までの贈与は3年、2024年1月1日からの贈与は7年分をさかのぼって相続税の計算をします。順番に伸びていくので完全に7年さかのぼるのは2031年の相続からとなります。

 教育資金の一括贈与、住宅取得等資金の贈与など、ほかにも生前贈与できる項目があります。このようなことも含めて、全体として早めに相談できるといいですね。

相続時精算課税の活用

 相続時精算課税制度は、原則60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫に、財産を贈与するときに選択できる制度です。

 先ほどの生前贈与の暦年贈与とどちらかを選択することになり、相続時精算課税制度を使うと決めたら暦年贈与に戻ることはできません。覚悟を決めて選択します。

 この相続時精算課税制度は2つの控除の仕組みがあります。まずは年間110万円以下の贈与は非課税となる「基礎控除」、基礎控除を除く累計で2500万円までの財産が非課税となる「特別控除」です。

 生前贈与(暦年贈与)で、2023年までは3年、2024年からは7年をさかのぼって相続財産の計算に含むと説明しましたが、相続時精算課税制度を選択した場合の110万円の基礎控除分は相続税の計算に含みません。さかのぼらないということです。

 これから収益を生みそうな財産をこの制度で先に渡すことも有効です。たとえば、有価証券、不動産などの値上がりしそうなもの、アパートなど収益物件もそうです。これから生み出す利益を先に渡すことができます。

ほかにもあります

 かききれません、ケースバイケースということも多くあります。まさしく、個別案件。認知症対策で書くことになる「家族信託」も遺産分割トラブル回避に有効です。家族信託については第3回の認知症対策の回で解説いたします。

 また、ここでは解説していませんが、「代償分割」という手法もあります。たとえば、長男にすべての遺産(現預金、不動産など)を相続させて、法定相続分にあたる現金を長男から他の相続人に渡すというやり方です。これは代償金として渡す原資を準備する必要があります。保有している現金か、保険金などで準備するなどして、代償金とします。

まとめ

 ひとまず、まとめます。話が広がりすぎたように思います。そして、書ききれてもいません。とくに、生前贈与(暦年贈与)、相続時精算課税制度については、明らかに不足しています。概要しか書いておりません。そういうこともあるなと参考にしてください。

 ライフスタイルプラスでは、それぞれの専門家、法律家の先生とも連携できていますから、誰に相談すればいいのかを相談したいということに対応できます。

 弁護士、司法書士、税理士、行政書士、多くの専門家が存在しますが、誰もが相続について詳しいかというと微妙です。ファイナンシャルプランナーもそうですが、得意不得意の分野があります。とくに相続問題については専門性が高いと感じています。

 遺産分割トラブルは回避できる要素は大いにあると考えています。何も対策がないまま相続発生となると、皆さま慌てますし、権利を主張したくなるし、感情が前面に出て言い合いになることもありそうです。

 いくつか対策を紹介しましたが、第一にあるのは「家族間のコミュニケーション」です。これを言うと、身も蓋もない気もしますが・・・