新NISAがスタートして、多くの方が投資を始めています。
しかし、相談を受けていて強く感じるのは
👉「買うことはできたけど、売るタイミングが分からない」という声がとても多いことです。
利益が出ていても「もっと上がるかも」と思って売れず、気がつけば下がってしまう。
逆に下がったときには「損切りすべき?」と焦ってしまう。
さらに、「NISAは長期投資だから売っちゃダメなんでしょ?」と誤解している方も少なくありません。
今回は、新NISAを活用する上での出口戦略(売るタイミング)について、実用的な考え方を整理していきます。
1. 新NISAの基本を再確認 ― 売却は自由にできる
まず大切なのは、「NISA=売っちゃいけない制度」ではないということです。
- 売却はいつでも自由
→ ロック期間はなく、必要に応じていつでも売れる。 - 売却後も非課税枠は再利用可能(つみたて投資枠の場合)
→ 例えば投資信託を売却して現金化すれば、翌年から同じ枠を使って再投資できる。 - 非課税のメリットは利益を出して使うときに発揮される
→ 運用益を現金化したときに税金がかからないのが最大の魅力。
つまり、NISAは「持ち続けなきゃ損」ではなく、使うための仕組みなんです。
2. 売るタイミングに迷う理由
投資の「買い」は比較的シンプルです。
しかし「売り」には感情が大きく影響します。
- 値上がりしたら「もっと上がるかも」と欲が出る
- 値下がりしたら「これ以上下がったら困る」と不安になる
- そもそも「正解が分からない」
この感情の揺れが、売る決断を難しくしているのです。
さらにNISAは「長期・非課税」というキーワードが強調されるため、
「20年持ち続けなければならない」と誤解している人も少なくありません。

3. 売るタイミングの大原則
売却に絶対の正解はありません。これを言ってしまうと元も子もありませんが、誰にも当てはまる正解はありません。
そもそも、相場の天井や底を完璧に当てることは、プロでも至難の業です。
ではどう考えるべきか?
大原則はシンプルです。
「売却の基準は相場ではなく、自分のライフプランに合わせる」
- 子どもの教育費が必要になる
- 住宅購入やリフォームの資金にあてたい
- 老後の生活費を少しずつ取り崩したい
このように、「お金を使うタイミング」で売却するのが基本になります。
つまり 出口は人生に合わせて決める というのが正しい考え方です。
「正解」と言えるのは、「必要な時に売却」だと考えています。
4. 実践的な売却の考え方
ここからは、実際に売却を考えるときに役立つポイントを整理します。
① 目標リターンをあらかじめ決める
「30%増えたら一部売る」など、基準を事前に決めておくと感情に振り回されません。
これは利確ルールと呼ばれ、取り入れている人も多いと思います。
② 分割して売却する
一度に全額売らず、数回に分けて売却すると精神的に安心。
「利益を確保しつつ、まだ運用を継続できる」というメリットがあります。
③ 下落局面で焦らない
値下がりしても「生活資金に直結しない投資資金」であれば、無理に売る必要はありません。
むしろ長期投資では一時的な下落は当然あります。
焦って売ると「安く売って高く買い戻す」逆効果になりやすいです。
④ 定率取り崩しを活用する(老後期)
老後資金として取り崩す場合は「毎年4%を売却する」など、一定の比率で売却する方法が有効となります。
海外では「4%ルール」と呼ばれ、長期的な資産寿命を延ばす戦略として知られています。
5. よくある誤解と正しい理解
誤解①「売ったら負け」
→ 利益確定=目的達成。むしろ安心につながる行動です。
誤解②「売却するとNISA枠がなくなる」
→ NISA投資額の上限は1800万円ですが、使い切ったとしても一部売却すると、翌年にその分の枠が復活します。つみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠は年間240万円、これを超えない範囲で、また購入できます。
たとえば、1800万円の投資上限額まで到達し、投資額500万円分を売却したとします。翌年、500万円の投資枠が復活しますので、またNISAでの投資ができるようになります。ただし、年間投資額の上限がありますので、500万円の枠を一括で活用できません。
誤解③「長期で持ち続けないと損」
→ 必要に応じて使うのが正解。必ず長期保有する必要はありません。

6. ケース別の考え方 ― こんなときどうする?
「売るタイミングは人それぞれ」と言われても、実際に迷いますよね。
よくあるケースを整理してみましょう。
ケース1:教育費で使いたい
大学進学費用など、大きなお金が必要になる時期が見えている場合は現金化します。
👉 必要な金額を少し前から計画的に売却・現金化しておくことが大切です。
直前まで何もせずに置いておくと、相場次第で予定金額に届かないリスクがあるからです。
ケース2:老後資金に充てたい
老後資金は一度に使うのではなく、毎年少しずつ取り崩すのが現実的。
👉 「定率取り崩し(例:毎年4%売却)」を目安にすると、資産寿命を延ばしやすくなります。他にも、定説的に言われている方法はありますので、自分に合った方法を検討します。
ケース3:投資を始めたばかりで不安
始めたばかりだと「今の含み益を守りたい」「下がったらどうしよう」と迷いやすいことが多いです。
👉 生活資金と切り分けた余裕資金で運用しているなら、焦って売らずにルールを決めて継続することが大事です。
ただし、これらはあくまで「一般的な考え方」です。
教育費がいつ必要なのか、老後資金をどのくらい準備するかは、ご家庭によってまったく違うシナリオになります。
7. 出口戦略まとめ ― 大事なのは「自分の答え」
ここまでのポイントを整理します。
- 新NISAは「いつ売るか」より「何のために売るか」が大切
- 相場ではなく、自分のライフプランに合わせる
- 売却方法は「目標リターン」「分割売却」「定率取り崩し」などが有効
- 誤解に振り回されず、制度を正しく理解して使う
投資本やネット記事は「一般論」を示してくれますが、あなたの生活に合わせた正解は書かれていません。
なぜなら、家族構成や収入、住宅ローンや教育費の負担などによって、ご家庭によって「売りどき」は大きく変わるからです。
つまり、新NISAの出口戦略は 「相場に聞く」のではなく「自分のライフプランに聞く」 必要があります。
8. まとめ
もしあなたが今、
- 「この利益を確定すべきか迷っている」
- 「教育費と老後資金、どちらを優先すればいいのか分からない」
- 「売却してもまた投資すべき?それとも現金で持つべき?」
こんな悩みを抱えているなら、それはライフプランの整理が必要なサインです。
実際にファイナンシャルプランナーとして相談を受けていると、
「相場」よりも「ライフイベント」が売却判断のカギになることがほとんどです。
だからこそ、ご自身の資産・家計・人生設計を一度、見える化してみることを強くおすすめします。
📌 ライフプラン表を作るだけで、
- どの時期にお金が必要になるか
- その時にNISA資金をどのくらい取り崩すべきか
- いくら残しておくと安心か
がハッキリ見えるようになります。
新NISAを「ただの投資」ではなく「人生に活かせる資産」に変えるために活用しましょう。
迷ったときは、FPと一緒に出口戦略を考えてみませんか?
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Wrote this article この記事を書いた人
福田 智司
▶独立系ファイナンシャルプランナーとして、相談業務、セミナー講師などで活動しています。 ▶FBCラジオ ラジタス 第一木曜日 10:50~ 「FPふくちゃんのお金に関するエトセトラ」レギュラー出演中 福井で唯一?のラジオFPです ▶FPでIFAというポジションを活かした相談が得意 節約だけが家計見直しじゃない!を念頭に置いた相談を心掛けています。 ▶法人向けに企業型確定拠出年金の導入サポートを推進しております