「投資はやった方がいいって分かってるけど、なんか怖いんです」
初めて相談に来られる方の半分以上が、そう言われます。
でも、その怖さの正体をたどっていくと、意外な答えに行き着きます。
それは、「損をすること」そのものではなく、
「後悔するかもしれない未来を想像してしまうこと」
今日は、そんな投資の怖さに潜む心理を、考えてみましょう。
「損失の痛み」は、喜びの2倍強く感じる
行動経済学では有名な「プロスペクト理論」という考え方があります。
簡単に言うと、人は損をする痛みを、得をする喜びよりも2倍強く感じるというものです。
たとえば、1万円をもらったときの嬉しさより、
1万円を失ったときのショックのほうが、ずっと強い──という感覚です。
だからこそ人は、「増やすこと」よりも「減らしたくない」と思うということです。
投資を始める前にブレーキがかかるのは、ある意味、とても自然なことなんですね。
特に真面目な人ほど、「もし損したらどうしよう」と慎重になり、
「やらなければ損もしない」と考えて行動を止めてしまいます。
けれど、その怖さをもう一歩掘り下げてみると、
じつは「損」そのものよりも、後悔を避けたい気持ちがあるのです。
本当に怖いのは、「損」ではなく「後悔」
想像してみてください。
もしあなたが投資を始めて、少し下がったときに周りからこう言われたら、
「やっぱり投資なんてやめとけばよかったのに」
その瞬間、胸の奥にチクッとくるのは、お金を失った痛みではなく、
「選んだ自分が間違っていたのかも」という後悔の気持ちなのかもしれません。
この心理は、「後悔回避バイアス」と呼ばれます。
人は未来に後悔しそうなことを想像するだけで、行動を控えるようになるのです。
リスクを取る決断ょり、安全な選択を取りがちということです。
つまり、まだ起きてもいない「後悔のシナリオ」が、私たちを止めているのです。
投資が怖いという気持ちは、決して弱さではありません。
むしろ、「自分の判断に責任を持ちたい」と思う誠実さの裏返しです。
後悔しない自分をつくる3つの考え方
では、この後悔の想像とうまく付き合うには、どうすればいいのでしょうか?
私がご相談の中でよくお伝えしているのは、次の3つの考え方です。
① 結果より「選択の理由」に納得する
投資は、未来を100%予測することはできません。
大切なのは、「なぜその選択をしたのか」という理由を、自分で説明できること。
「自分の目的に合っている」「リスクを理解している」
そう言えるなら、たとえ短期的にマイナスが出ても、それは納得の範囲ということになります。
後悔はぐっと小さくなります。
正解を当てる投資ではなく、納得できる投資を目指すことです。
それが、長く続けられる人の共通点と言えます。
② 短期の変動を想定内にしておく
価格の上下は、投資の世界では通常運転です。
でも、多くの人が「下がるとは思ってなかった」と感じて動揺します。まあ、上がると思って購入するから当然です。
最初から「上がる時期もあれば、下がる時期もある」と受け入れておけば、
どんな変動も想定内になります。
私はよく「10年で見るつもりで始めましょう」とお伝えします。
1年、1か月で上がるか下がるかに一喜一憂せず、
「長期で平均をとって育てる」ことが投資の基本です。
③ やらなかった後悔も想像してみる
不思議なことに、人はやって後悔することは強くイメージできても、
やらずに後悔する未来はあまり想像しません。
でも、もし今から10年後、周りの人が資産形成を始めていて、
「自分もあの時、少しだけでもやっておけばよかったな」と思うかもしれません。
やらなかった後悔もまた、未来の自分を苦しめる可能性があります。
どちらの後悔を選びたいか、、、それを考えるだけでも、視点が変わります。
怖さを消すより、「怖さとどう付き合うか」
多くの人が「投資の怖さをなくしたい」と思います。
でも、じつは怖さをゼロにする必要はありません。それに、ゼロにはできないとも思います。
投資は「怖いもの」だと思うからこそ、
リスクを理解し、慎重に選び、計画的に続けることができる。
怖さは、あなたを守るブレーキでもあるのです。
大事なのは、「怖いけれど、できる方法を探す」こと。
そのためにあるのが、少額から始める、長期・積立・分散という工夫です。
たとえば、月1万円の積立で始めれば、
たとえ下がっても「生活に支障がない」範囲で経験を積むことができます。
怖さを感じながらも続けられる仕組みをつくる──それが現実的な第一歩となります。
怖さの中に、自分の価値観が見える
「投資が怖い」と感じるとき、
じつはあなたの中に何を大切にしているかという価値観が隠れています。
損をしたくないのは、
家族を守りたい、安心して暮らしたいという気持ちの裏返しです。
それは、決して悪いことではありません。
だからこそ、「怖さをなくす」よりも、
「怖さを理解して、味方につける」ことを意識してみてください。
投資は、勇気ではなく納得で始めるもの、
そして、結果ではなく選択で自分を誇れるようになることです。
私のモットーは、「我慢より選択」です。
お金の不安も、投資の怖さも、我慢で乗り越えるのではなく、
自分の選択に納得できる形で向き合っていくこと。
怖いの奥には、きっと守りたい思いがあります。
その思いを軸に、あなたらしい投資の一歩を踏み出してみてください。
まとめ
投資の世界は、数字やグラフの話に見えて、
じつは「感情」との向き合い方が重要だと思っています。
怖いときは、無理に強がらなくて大丈夫なんです。
不安の奥には、「ちゃんと考えたい」「失敗したくない」という
まっすぐな思いがあるからです。
大切なのは、怖さをなくすことではなく、怖さを理解して選べること。
どんな結果になっても「自分で選んだ」と言えるように、
その過程こそを大事にしていきましょう。
今日のブログが、あなたが安心して一歩を踏み出すヒントになればうれしいです。
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Wrote this article この記事を書いた人
福田 智司
▶独立系ファイナンシャルプランナーとして、相談業務、セミナー講師などで活動しています。 ▶FBCラジオ ラジタス 第一木曜日 10:50~ 「FPふくちゃんのお金に関するエトセトラ」レギュラー出演中 福井で唯一?のラジオFPです ▶FPでIFAというポジションを活かした相談が得意 節約だけが家計見直しじゃない!を念頭に置いた相談を心掛けています。 ▶法人向けに企業型確定拠出年金の導入サポートを推進しております