「このままでいい」は本当に大丈夫?未来を止める“現状維持バイアス”の罠

この記事はだいたい 4 分前後で読めます。

「不安はあるけれど、特に何もしていないんです…」

ライフプランの相談をしていると、よくこんなお声を耳にします。

「将来が不安なのは分かっているんです。でも、何から手をつければいいか分からなくて…」
「つみたてNISAやiDeCo、やったほうがいいとは思うんですけど…まだ始められていません。」

このように、“必要性は感じているのに、なぜか動けない”。この心理状態には、実はれっきとした名前があります。

それが、「現状維持バイアス」です。

「現状維持バイアス」とは?

 現状維持バイアスとは、たとえ変化が良い結果をもたらすと分かっていても、「今のままが安心」と思い込んでしまう人間の心理的傾向のことです。

私たち人間は、変化や新しい選択をするときにストレスを感じやすく、無意識のうちに「今のままの状態」を続けようとします。

たとえば、生命保険を見直したいと思っていても、

「営業さんの顔が浮かぶから解約しにくい」
「見直して失敗したらどうしよう」

など、行動を妨げる思考が働いてしまうのです。

FPとして実感する「現状維持バイアス」の場面

 ファイナンシャルプランナーとして、さまざまなお客様とお話しするなかで、現状維持バイアスが原因で「行動できない」ケースを多く見てきました。いくつか事例を紹介したいと思います。

つみたてNISAを始めたいけど、始められない

 将来に備えて投資を始めたいと考えている方の中には、NISA口座の開設まで進んでいながら、実際には積立設定ができていない、購入まで至っていないという方も少なくありません。

「失敗したらどうしよう」
「もっと勉強してからにしたい」

という気持ちが強くなり、結果として「何もしていない今」を選んでしまう。時間を味方にする投資において「何もしない」ことは、実は最大のリスクになることもあるのです。

生命保険を見直したいけど、そのままにしている

「保険料が高くて気になっている」
「よく分からないまま入ってしまったかもしれない」

そう感じていても、多くの方が保険をそのままにしています。

 それは、「これまでの選択を否定したくない」という気持ちや、「よく分からないからとりあえず今のままで…」という安心感に流されてしまっているからです。

でも、その生命保険、本当に今のあなたに必要なものだと、しっくりきてるでしょうか?

ライフプラン表を作っていない

不安があるのに将来の見通しを「見える化」していない方も多くいらっしゃいます。

実際に数字でシミュレーションをしてみると、

「意外と大丈夫だった」
「このままではまずいことが分かった」

など、明確な気づきが生まれます。でも、それを見ること自体に「怖さ」を感じて、先延ばしにしてしまう方が多いのも事実だと思います。

「現状のままでなんとかなる」という希望的観測にすがってしまう。ここにも、現状維持バイアスがひそんでいます。

行動経済学の視点から読み解く

行動経済学では、現状維持バイアスは人間の本能的な反応として説明されています。

 これは、「損をしたくない」という損失回避の心理と深く関係しています。人は、得をすることよりも、損をすることのほうが強く印象に残るため、

「動いて失敗するくらいなら、動かない方がいい」と感じやすいのです。

でも、考えてみてください。未来に向けて行動しなかったことで、

「時間を無駄にした」 「資産形成のチャンスを逃した」

ということになれば、それもまた損失ではないでしょうか。

分かっているけど、変われない

そんな自分に、私自身も日々向き合っています。

 実は、私もダイエットをしようと思っては、つい先延ばしにしてしまう毎日…。50歳を過ぎたら「モテたい」より「健康のため」にダイエットが必要なのですが、慣れた生活を変えるのはやっぱり難しい。

 だからこそ、お金のことでも「一人では難しい」と感じるのは自然なことだと思います。でも、一緒に考える誰かがいれば、ほんの少しの勇気で前に進めることもあります。

 ライフスタイルプラスでなくとも、お近くのファイナンシャルプランナーに相談することをお勧めします。

現状維持バイアスを乗り越えるには?

 まずは、自分の中に「現状維持バイアスがあるかもしれない」と気づくこと。それだけでも、少しずつ意識が変わっていきます。また、「全部を完璧にしよう」とせずに、できるところから一歩ずつ進めていくことが大切です。

たとえば…

  • 家計簿を1週間だけつけてみる
  • 金融庁のNISA特設ページを見る
  • 使っていないサブスクを解約してみる
  • ライフプラン表のひな型をダウンロードしてみる

そんな小さな一歩で、現状を動かすきっかけがつかめます。

未来の安心は、「今の選択」がつくる

 何もしないことが一番リスクの少ない選択に思えるかもしれません。でも、今の生活が5年後、10年後もちょうど良い、何もしなくていい、とは限りません。

未来の不安を減らすためには、

「今のうちに動いておく」ことが何よりの安心材料になります。

 少しでも気になることがあれば、どうか一人で抱え込まずに相談してください。あなたのペースで、あなたらしいお金の未来を一緒に考えていきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか
現状維持バイアス、納得感あります。心当たりしかありません。ダイエットできません(笑)

 現状維持バイアスという心理的な要素ももちろんありますが、一人でするには限界があるとも言えます。ひとりでは、なかなか続きません。

 家計の改善や、投資を始めることも、ひとりより相談しながらの方がスムーズに進むのだと思います。家族ではないファイナンシャルプランナーと相談をする方が、感情に支配されず話が進むと思います。旦那に言われたら腹立つ!とかありますもんね・・・

Wrote this article この記事を書いた人

福田 智司

▶独立系ファイナンシャルプランナーとして、相談業務、セミナー講師などで活動しています。 ▶FBCラジオ ラジタス 第一木曜日 10:50~ 「FPふくちゃんのお金に関するエトセトラ」レギュラー出演中 福井で唯一?のラジオFPです ▶FPでIFAというポジションを活かした相談が得意 節約だけが家計見直しじゃない!を念頭に置いた相談を心掛けています。 ▶法人向けに企業型確定拠出年金の導入サポートを推進しております

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