シニア向け「プラチナNISA」は、本当にプラチナの輝きはあるのか?

シニア向け「プラチナNISA」は、本当にプラチナの輝きはあるのか?
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 2026年の税制改正に向けて、岸田前首相が会長である資産運用立国議員連盟が、65歳以上のシニア向け「プラチナNISA」の制度創設を令和7年4月に提言しました。

 現行のNISAでは不採用となった毎月分配型の投資信託が解禁となるようです。そもそも、中長期投資に向いていないという理由で毎月分配型の投資信託はNISA不採用でした。

 これは、プラチナの輝きを放つのか?それとも、落とし穴なのか?どうなんでしょうか

プラチナNISAの概要

 報道されている内容を確認すると、65歳以上のシニア個人を対象に、新たにプラチナNISAを創設を検討しており、2026年の税制改正に盛り込む予定だということです。岸田前首相が会長の資産運用立国議員連盟が提言しています。

 プラチナNISAの特徴は次の通り

  • 65歳以上の個人が対象
  • 毎月分配型の投資信託を投資対象とする
  • NISA口座の資産を移管できる、毎月分配型の投資信託にスイッチングできる

65歳以上を対象に、NISA不採用だった毎月分配型の投資信託がOKで、制度上も緩和されるということのようです。

これまでの流れの到達地点か

 岸田政権時代の2022年に、「資産所得倍増プラン」によりNISA枠の拡大が提唱され、2024年から新NISAが始まりました。「貯蓄から投資へ」の流れが出来上がったと言えるでしょう。

 NISAは中長期投資をメインに、「長期」「積立」「分散」というスタンスで投資を継続することで、資産を育てることが大きな目的となっています。NISAでは、毎月分配型の投資信託が不採用ということです。

 高齢者のニーズに安定的な収入が欲しいというのがあります。年金にプラスできると嬉しいですよね。そこにピタリとハマるのが毎月分配型の投資信託ということです。毎月分配型の投資信託がプラチナNISAに採用されると、ニーズが満たされることになり、高齢者の「投資熱」が上昇するかもしれません。

 それ以上に加熱するのは、金融機関の「営業熱」になりそうです。

毎月分配型の投資信託とは

 毎月分配型の投資信託とは、どのようなものでしょうか?

簡単にお伝えすると、「毎月お金がもらえるかもしれない投資信託」です。

もう少し詳しく説明します

みんなでお金を出し合う
多くの人がお金を出し合って、大きな資金のまとまりを作ります。これが投資信託です。

専門家が運用する
集めたお金を資金としてプロ(運用会社)が株式や債券などに投資をして、資金を増やそうとします。

運用益が出たら分配金
運用がうまくいって、利益が出たらその一部をお金を出したみんなで受け取ります。これが分配金です。

毎月もらえる分配金
毎月分配型の投資信託は、分配金を毎月受け取ることができます。

毎月お金が受け取れるのは、うれしいですよね。毎月のお小遣い、年金の上乗せという感覚は幸せですね。

毎月分配型の投資信託の注意点

 表があれば裏があるというもので、注意点もあります。

分配金は利益から出るものでもない

 分配金は利益から出てそうなものですが、実はそうでもありません。運用の利益が少ない、もしくはマイナスだった場合は、あなた自身が出した元本から支払われることになります。タコ足配当(タコ配)といいます。タコが空腹になったら自分の足を食べるという俗説から言われています。投資信託の基準価額が毀損(減額)されていきます。

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お金が増えるスピードが落ちるかも

 毎月分配金を受け取ると、その分、投資に回る資金が減少します。投資は資金を大きくしていくと複利効果があるのですが、分配金を受け取ると効果は薄れていく可能性があります。

手数料がかかる

 投資信託には、運用会社に支払う手数料があります。その手数料は投資信託によって異なるのですが、毎月分配型の投資信託の手数料は比較的高く設定されている場合があります。

高齢者の投資ニーズは毎月分配なのか?

昨年、高齢者の投資相談を受けております。数人ですけど。

 じつは、全員、毎月分配型の投資信託を希望していました。全員ですよ。ちょっとビックリしました。毎月分配型の投資信託ですから、NISA口座ではなく、通常の証券口座での取引となります。

 相談の時の会話を振り返ると、毎月受け取る魅力が大きいのだと感じます。入り口が毎月分配金が出ることです。NISA口座を使って、年4回の分配金が受け取れる投資信託を提示しても、響きませんでした・・・

 なるほど、毎月分配金が出る投資信託のニーズは確かにあるなと感じた経験でした。そこにプラチナNISAですから、全国的にそうなのかと、提言されたことは納得感はありました。

 まとめると、高齢者における毎月分配型の投資信託への投資ニーズはあると思います。

ニーズと理解は釣り合ってるか?

 たしかに、毎月分配型の投資信託のニーズはあると思います。ただ、理解できているかというと、怪しいものです。

 いわゆるタコ配になる可能性をどこまで理解しているのか、分かりません。株式の配当金とごっちゃになっていないか心配です。

 その辺りをしっかり説明してくれる営業担当から、理解したうえで投資をしてほしいと願います。

プラチナNISAはお勧めか?

 それでは、プラチナNISAはお勧めか?と聞かれると、そうとも言えないと思います。それは、私的に毎月分配型の投資信託を選択する優先順位が低いからです。

 毎月お小遣いのようにお金を受け取りたいと考えて投資信託を選ぶときに、入り口を「毎月分配型かどうか」にする必要がないからです。毎月分配型の投資信託を購入しないと、毎月お金を受け取れないかというと、そうではないです。

 投資信託の「定期売却サービス」なるものがあり、毎月、指定した金額または指定した口数を売却して、売却代金を受け取るサービスがあります。毎月でなくてもいいです、年金は偶数月なので、奇数月に定期売却する設定もできます。

 それでも、プラチナNISAですか?と言いたい。やるなら慎重にです。乗せられて購入はダメです。

まとめ

 プラチナNISAを入り口に、「毎月分配型の投資信託に投資をするぞ~」はお勧めしません。

 投資を検討しているときに、投資対象として吟味をして、決めたものが毎月分配型の投資信託だったとしたら、プラチナNISAを使いましょうという話です。そのようなことがあればです。

 入り口が違います。

 これは、NISA、iDeCoも同じです。あくまでも、仕組み、制度ですから。「NISAって儲かるらしいな、やってみよう」ではなく、「投資を始めよう、お得な制度のNISAを使おう」というのが健全です。iDeCoもです。

 プラチナNISAはプラチナの輝きがあるのか?と言われると、「ありません」がライフスタイルプラスの回答です。

 

 

Wrote this article この記事を書いた人

福田 智司

▶独立系ファイナンシャルプランナーとして、相談業務、セミナー講師などで活動しています。 ▶FBCラジオ ラジタス 第一木曜日 10:50~ 「FPふくちゃんのお金に関するエトセトラ」レギュラー出演中 福井で唯一?のラジオFPです ▶FPでIFAというポジションを活かした相談が得意 節約だけが家計見直しじゃない!を念頭に置いた相談を心掛けています。 ▶法人向けに企業型確定拠出年金の導入サポートを推進しております

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