突然の勤務先倒産、病気やケガでの長期離脱、家族の事情…。不測の事態は、ある日いきなり起こります。
そのとき困るのはシンプルで、仕事がない=収入がない=生活費がないという現実です。
ここで登場するのが、いわゆる生活防衛費(エマージェンシー・ファンド)。
ただ、過去ブログにも書いたとおり「まずは生活防衛費を作ってから投資を始めよう」という一本道は、現実的に時間がかかりすぎることがあります。
だから私は以前から「同時進行」をおすすめしてきました。
そして今週は、その考え方をもう一段アップデートします。
結論はこうです。
生活防衛費は現金100%じゃなくていい。
でも、「今すぐ使う分」は現金で確保する。
そして、残りは換金しやすさ(すぐ使えるか)で層を分ける。
これだけで、「貯める」と「増やす」は勝手に同時進行になります。
不安が消えない原因は「金額」より「混ざってること」
生活防衛費の相談で多いのが、こういう状態です。
- 口座残高はそれなりにある
- でも、どこまでが緊急用で、どこからが目的別か分からない
- いざというとき、何から取り崩していいか迷う
この状態だと、金額が増えても安心感が増えにくい。
理由は簡単で、「使ってはいけないお金」と「使っていいお金」が混ざっているからです。
生活防衛費は「貯めること」以上に、設計が大事です。
生活防衛費は「3層」に分けると迷わない
私が推奨するのは、生活防衛費を「全部現金」か「全部運用」かの二択で考えないことです。
ポイントは、いつ・どれくらいのスピードで使う可能性があるかで置き場所と役割を分けること。難しい言葉を使わず、次の3層で整理します。
第1層:即時資金(いますぐ使える現金)
目安は生活費1〜2か月分。給与が入り、引き落としが行われる「普段使いの口座」です。
この層は「動いて当たり前」。赤字になった月や急な出費が重なった月のクッションになります。
- 今月の家計が赤字になった
- 急な出費(医療費・家電故障・冠婚葬祭)が重なった
- 失業や休職で、まず今月をしのぎたい
こうした「今日〜来月」の穴を埋める役割なので、普通預金でOK。ここは値動きゼロ・即動かせることが最優先です。

第2層:緊急資金
次に用意したいのが、生活口座とは分けた避難口座です。目安はさらに2〜4か月分。第1層(1〜2か月)と合わせて、緊急予備資金としてよく言われる合計6か月分をひとつの基準にすると分かりやすいでしょう。ただし、ご家庭によって状況は異なりますから、あくまで目安としてください。
ここは金利を狙う場所ではありません。目的はひとつ、生活口座と混ぜないことで「いざという時に迷わず使える」状態を作ることです。
そして、ここで私が以前から提案しているのが「同時進行」という考え方です。
避難口座は大事。でも、避難口座だけを先に満額まで作ろうとすると、資産形成のスタートが数年遅れることがあります。
そこで、
避難口座の完成形は現金(別口座)で守りつつ、作るプロセスは投資と同時進行でもいい、というスタンスです。
たとえば、
- まず避難口座を作り、最低ライン(例:1〜2か月分)は現金で確保する
- そのうえで、避難口座を厚くしていく積み上げの一部を、積み立て投資と並走させる
- ただし緊急時に使うのは「投信を売る前提」ではなく、まず避難口座(現金)を使う前提にしておく
この「積み立ての併走」をするなら、株式より値動きが比較的マイルドな債券寄りを選ぶのも一案です(もちろん投資信託なので値動きはあります)。
要するに、避難口座は「守る」ための資金です。でも作り方は「育てる」も同時に進める。これが第2層の考え方です。
第3層:回復枠(余裕があれば持つ外側の資金)
ここが今回の記事の新しい提案の核です。
緊急予備資金としての目安(合計6か月分)までを、第1層+第2層で「別口座の現金」として守れると、家計の土台はかなり強くなります。
そのうえで、6か月分を超えた部分は、私は「緊急予備資金」ではなく、回復枠(余裕枠/再スタート資金)として別枠で考えるのがおすすめです。
使うタイミングが「今日明日」ではなく、もう少し先(立て直しの局面や将来)になりやすいからです。
この層は、必ずしも債券にこだわる必要はありません。家計の安定度とリスク許容度に応じて、株式ファンドを含む運用を置き場として選んでOKです。
大事なのは「何を買うか」より、役割の線引きです。
- 6か月分までは、緊急時に確実に使える現金として守る(第1+第2層)
- 6か月を超えた部分は、回復枠として運用も選べる(第3層)
この線引きができると、「生活防衛費」と「老後資金準備」がごちゃ混ぜにならず、家計全体の設計がブレにくくなります。
回復枠は、生活防衛費を超えた余裕の部分です。ここは急な出費に使う前提ではないので、老後資金・教育資金・住宅の修繕や買替など、中長期の目的資金として兼用してOKです。
ただ、目的を混ぜすぎると管理がややこしくなるので、「わが家の回復枠は何のため?」を一度整理しておくとブレにくくなります。収入の安定度や固定費、保障、制度まで含めて家計全体で配分を決めたい方は、いつでもご相談ください。
ここで誤解がないように補足(全体最適の話)
ここでは生活防衛費(緊急予備資金)をテーマで話を進めています。でも、家計においてはそれだけでなく将来への準備、老後資金準備も関わってきます。前段の最後にも触れました。同じお金の準備でも時間軸が違うので、最適な配分は家庭ごとに変わります。
生活防衛費は「いつ起きてもおかしくない」ので確実に使える形(別口座の現金)が優先となります。
一方、たとえば老後資金は「使うのはずっと先」なので長期で育てる設計が優先です。
緊急予備資金だけ、老後資金だけ、と切り分けると、どこかで無理が出ます。収入の安定度・固定費・保障・制度(失業給付や傷病手当)まで含めて、家計全体でちょうどいい配分を決めるのがFPの仕事です。迷ったらいつでもご相談ください。

「貯める vs 増やす」ではなく、「分ける」と同時進行になる
ここまでの話を一言でまとめると、
- 第1層:現金(即時)
- 第2層:避難口座(数か月)
- 第3層:回復資金(状況に応じて資産形成を積極的に)
この設計にすると、
生活防衛費を作りながら資産形成も進む状態が自然に作れます。
当時書いた「同時進行でいきましょう」を、より実務的に言い換えるなら、
順番で悩むより、置き場所を分ける。すると同時進行になる
です。
使いどきルールを決めると、不安が減ってブレなくなる
生活防衛費の効果は、金額だけで決まりません。
「いつ使っていいのか」が曖昧だと、結局は不安が残ります。
おすすめは、簡単でいいのでルールを置くことです。
- 第1層は「生活が回らない時に使ってOK」
- 第2層は「収入が途絶える・大きく減るなど、緊急事態で使う」
- 第3層は「立て直し局面(再就職・復職までの橋渡し)に使う」
さらに補充ルールも決めると強いです。
- 使ったら、まず第1層を優先して戻す
- 次に第2層
- 第3層は状況に応じて再構築
こうしておくと、「使ったら終わり」ではなく「使っても戻せる」感覚が持てます。
不安が減ると、結果的に投資もブレにくくなります。
まとめ:安心は金額ではなく設計で作れる
生活防衛費は重要です。ただ、重要なのは「現金をどれだけ積み上げるか」だけではありません。
- 生活防衛費は現金100%じゃなくていい
- でも、今すぐ使う分は現金で確保する
- 残りは換金しやすさで分ける
- 混ぜない(緊急用と目的別を切り分ける)
- 使いどきルールと補充ルールを決める
この設計にすると、以前から提案している「同時進行」の思想も、より現実的に回ります。
順番で止まるより、分けて動かす。これが生活防衛費の“実務的な作り方”だと思います。
もし「自分の場合、第1層〜第3層をどう配分すればいい?」が悩ましい場合は、家計(固定費、収入の安定性、家族状況)で最適解が変わります。必要なら、状況に合わせて一緒に設計していきましょう。
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Wrote this article この記事を書いた人
福田 智司
▶独立系ファイナンシャルプランナーとして、相談業務、セミナー講師などで活動しています。 ▶FBCラジオ ラジタス 第一木曜日 10:50~ 「FPふくちゃんのお金に関するエトセトラ」レギュラー出演中 福井で唯一?のラジオFPです ▶FPでIFAというポジションを活かした相談が得意 節約だけが家計見直しじゃない!を念頭に置いた相談を心掛けています。 ▶法人向けに企業型確定拠出年金の導入サポートを推進しております