令和4年度の税制改正「住宅ローン控除の見直し」注意すべきポイントをファイナンシャルプランナーが解説

令和3年12月10日、「令和4年度税制改正大綱」が決定いたしました。さまざまな分野での改正がありますが、ここでは住宅ローン減税の見直しについて解説していきます。令和3年12月31日で住宅ローン控除の適用期限が終了になる予定でしたが、令和7年まで延長されることになります。次から内容を確認していきましょう。

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住宅ローン控除は4年延長

住宅ローン控除は気づいたころには存在していて、当然あるものだと思っていませんでしたか?じつは期限が決められていたのです。令和3年12月31日で終了する予定だったのが、今回の改正で令和7年12月31日まで延長されました。

4年間延長されるのですが、住宅ローン控除は昭和47年から始まって、何度も期限が来ていても終了したことはありませんので、あるのが普通という状態です。

今回の改正で4年間延長され、令和4年・5年と令和6年・7年の2年ごとに内容が変わります。次から令和3年までの内容とこれからを比較していきましょう

住宅ローン控除はどこが変わる?注意すべきポイント

控除額の0.7%への引き下げについては、それまでの1%では住宅ローン金利が低水準であることから支払った利息より控除額が大きくなると指摘されていましたから、今回の改正で是正されるということになります。改正されるポイントを、新築住宅・中古住宅に分けて一覧表にしたので確認してみてください。

新築住宅・買取再販の場合

 

令和3年 令和4年・5年 令和6年・7年
新築

買取再販

年末残高
の上限
一般住宅 4000万 3000万 0万※
認定住宅 5000万 5000万 4500万
ZEH水準省エネ住宅 4000万 4500万 3500万
省エネ基準適合住宅 4000万 4000万 3000万
控除期間 一般住宅 13年 13年 10年
認定・ZEH、省エネ住宅 13年
控除率 1% 0.70%

 

※令和5年までに新築の建築確認ができていれば2000万円

中古住宅の場合

 

 令和3年 令和4年・5年 令和6年・7年
 中古 年末残高
の上限
一般住宅   2000万   2000万   2000万
認定住宅   3000万   3000万   3000万
控除期間 一般住宅            10年
認定・ZEH、省エネ住宅
控除率    1%        0.70%

※控除率以外の変更は無いように見えますが、築年数について条件が緩和されます

住宅ローン控除の見直しのポイント

年末残高の上限と控除額

令和3年からの改正で大きく変わるのは、年末残高の上限と控除率です。新築の一般住宅の場合、年末残高の上限が4000万円⇒3000万円、控除率が1%⇒0.7%に縮小されることで、年間の税額控除額は最大40万円⇒21万円となります。

税額控除は払った税金に対して戻ってくるという意味なので、誰でも最大の額が戻ってくる訳ではありません。所得税で15万円を納税している人は税額控除額(戻ってくる税金)は15万円となります。そして、所得税から引ききれなかった分は翌年の住民税から差し引かれます。

 

中古住宅

中古住宅に関しては利用しやすくなります。これまでは、木造は築年数20年以内、マンションは築年数25年以内という条件がありました。令和4年からはその条件が無くなり、1982年(昭和57年)1月1日以降の建物であれば新耐震基準に適合しているとして、住宅ローン控除の適用となります。つまり、木造住宅は築20年⇒築41年(令和4年時点)と対象が拡くなります。

これは、住宅ストックの有効活用と優良化を見据えたもので、中古住宅市場が活性化する可能性を秘めていると考えます。私としては中古住宅の条件拡大が今回の住宅ローン控除の見直しのなかでメリットが大きいと感じます。

 

ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅の区分が増える

令和3年までは一般住宅と認定住宅の2区分でしたが、改正でZEH水準省エネ住宅と省エネ基準適合住宅の区分が増えます。認定住宅とは「認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅」のことで、住宅コストが高くなることもあり購入者があまり多くなかったという現状もあります。

そこで、ZEH水準省エネ住宅と省エネ基準適合住宅の区分を増やすことにより、これらの住宅を購入する人が増えてくると予想します。一般住宅と比較すると住宅コストは高くなりますが、これからの主流になっていくでしょう。

 

所得要件の引き下げ
合計所得金額が3000万円以下から2000万円以下に改正。住宅ローン控除を使えなくなる人が増えます。所得が高く金融資産がしっかりあって、キャッシュでも払えるけど住宅ローン控除で所得税が戻るなら住宅ローンを使っておこうかなと考えていた合計所得が2000万円代の人は、残念ですが住宅ローン控除が使えなくなります。
※年収と所得は違います。【例】会社員で額面の年収2000万円の人はそこから給与所得控除などがあり、所得は2000万円以下となります。

 

●住民税における住宅ローン控除の限度額

改正前 改正後
控除限度額 所得税の課税所得金額等の7%
(最高136,500円)
所得税の課税所得金額等の5%
(最高97,500円)

改正後で確認すると、所得税の課税所得金額等の5%と97,500円の小さい額が控除されるということです。こちらも控除額の縮小となります。

 

一般住宅は住宅ローン控除から外れる
2年後の令和6年からは、一般住宅は住宅ローン控除の対象から外れます。これで、ますます省エネ住宅の推進につながります。

 

令和6年から、さらに縮小に
控除率は変わりませんが、住宅ローンの年末残高の上限が下がります。住宅ローンの借入額によっては控除額の合計が少なくなる可能性があります。もし、令和5年に駆け込みで住宅購入などどお考えの方はご注意ください。慌てると損をするかもしれませんよ。

住宅ローン控除の見直しはどのタイミングから?

令和4年から改正といわれると、すでに住宅ローン控除を受けている人で「今まで1%の控除だったのに0.7%に減るの?」と心配される人もいるかもしれません。安心してください、そんなことはありません。

では、どのタイミングで改正後の住宅ローン控除の対象になるのでしょうか。

住宅ローン控除は、その年に入居した人が対象となります。令和4年度の税制改正による住宅ローン控除見直し後の対象の人は、令和4年1月1日以降に入居した人となります。

ただし、ここで注意が必要なのは令和4年1月1日以降に入居した人でも住宅ローン控除が1%の人もいることです。注文住宅で令和3年9月30日、分譲住宅では令和3年11月30日までに契約した場合について、令和4年12月31日までに入居すれば、1%の控除を受けることができます。

令和4年に新築住宅に入居する人は、住宅ローン控除率が1%の人と0.7%の人が混在することになります。確定申告の時は確認が必要です。

一般住宅はもう建築できない

建築できないわけではないのですが、住宅ローン控除の対象から外れるとなると選択しにくくなりそうです。ZEH水準省エネ住宅や省エネ基準適合住宅を建築する場合は、建築コストが上がりますので、建築予算と住宅ローン控除のせめぎあいの中で検討することになるかもしれません。

税制改正は日本がどの方向に進むのかを示す機会でもあります。自動車だとエコカーや電気自動車がそうです。減税や補助金などでエコカーや電気自動車の購入をバックアップします。同じようなことで住宅においても省エネ住宅を国が推進するということです。2050年カーボンニュートラルの実現に向けた対策の一つです。

いろいろ説明しましたが、ひと言で言うと「省エネ基準住宅以外は建てるなよ」ということでしょう。住宅メーカー、工務店も「今は省エネ住宅が標準ですよ」というトークになると思われます。

まとめ

人生において最大の買い物である住宅購入に、住宅ローン控除は重要です。しかし、「住宅ローン控除があるから新築住宅を買おうかな」は違います。

住宅を購入することは、「家を買うぞ!」という勢いも必要かもしれませんが、衝動買いするものではありません。ファイナンシャルプランナーがアドバイスするなら、キャッシュフロー表を作成し、将来を見据えてお金の流れを確認してからの方が失敗は少ないということです。

住宅ローン控除が縮小されるのは残念で、これから新築住宅購入を考えている人は、なんとなく損をしたように感じるかもしれませんが、控除率0.7%を受け入れましょう。関連記事でも書きましたが、「リセールバリューのある中古住宅購入」には追い風の住宅ローン控除の見直しとなりました。中古住宅市場の活性化と空き家問題の解決の糸口になることを期待します。

最後に、注意すべきポイントをひとつ。令和5年には「今が買い時ですよ」「今年買わないと損しますよ」という煽りトークが住宅業界であるかもしれません。そのような誘惑に負けずに気をしっかり持って、ご自身の資金計画をもとにご自身のタイミングで住宅購入することをお勧めします。

住宅購入だけでなく、教育資金、老後資金など人生は続きます。

ファイナンシャルプランナーに相談し、キャッシュフロー表を作成することで資金計画を無理なく立てることができます。

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