生前贈与(暦年贈与)で「孫への贈与が効果的」は本当なのか?

これまで、相続や贈与に関する制度改正が何度となくありました。基本的に増税となるので、ルールが変わりそうだということで駆け込み贈与なども、あちこちで見受けられます。

そんな贈与に関してルールを理解しておくと、節税できることに気が付くこともあります。

今回は生前贈与についてポイントを解説していきます。

生前贈与の内容確認と、これからの見通し

生前贈与について、確認しておきましょう。

生前贈与は、「贈与をする人」と「贈与を受ける人」がいます。贈与税を負担するのは「贈与を受ける人」です。

1年間(1月~12月)に受けた贈与額によって課税されますが、110万円以内であれば非課税です。

国税庁 贈与税の計算と税率(暦年贈与)をご参照ください

生前贈与と相続は密接な関係

生前贈与は毎年できますので、贈与税の非課税の範囲で相続財産を移していき、相続税を節税することができます。生前贈与は何人でもできるので、10人いれば1100万円、5人だと550万円を贈与し、相続財産を減らすことができます。

ただし、相続人が亡くなる3年前以内の贈与については、「持ち戻し」といって相続財産に含まれ相続税の対象となります。

日本では「持ち戻し」が3年と決められていますが、欧米と比較すると随分短く設定されています。うまいことすると、しっかり相続財産を生前贈与できるので、この「持ち戻し」期間は延長されることが予想されています。

税制改正大綱においても、「諸外国の制度を参考にする」という記載もあるということで、持ち戻し期間は近いうちに延長される可能性があります。

生前贈与での孫への贈与は効果的なのか

3年の持ち戻し期間があることは理解していただけたと思いますが、じつは、対象が法定相続人なのです。

つまり、法定相続人以外に生前贈与をすると、持ち戻し対象外となります。

年間110万円の基礎控除額以内であれば、祖父母から孫への贈与は持ち戻し期間も関係なく非課税で渡すことができます。

祖父母からの大学資金の応援は生前贈与か

祖父母に金融資産の余裕があり、孫の大学進学へお応援しようと考える人もいるのではないでしょうか?

【質問】

生前贈与になるのでしょうか?110万円を気にする必要があるのでしょうか?

【答え】

入学金、学費、下宿代などを都度負担するのであれば、基本的に贈与の対象ではありません。

注意が必要なのは、4年分まとめて1000万円渡しておくわ・・・これは、贈与税の対象になりそうだということです。

孫への生前贈与での注意点

祖父母から見た子ども世代(法定相続人)を飛ばして孫世代への贈与は、贈与税が発生するとしても相続を1回飛ばすことができるので、相続税の節税につながることもあります。

孫への贈与はメリットがあるので、選択肢のひとつとして検討しても良いと考えます。

贈与税が発生しないように孫への贈与をする場合でも、贈与税の対象になる場合があります。そんな注意点をご紹介していきます

①生前贈与のことを孫が知らないケース

生前贈与は、贈与する側(祖父母)と贈与を受ける側(孫)との間で、その認識があることが前提となっています。

つまり、祖父母が孫に内緒で積み立てているようなケースは贈与として認められないことがあります。

内緒に近いところで、孫が小さくて理解できない場合も贈与と認められないのでしょうか?

毎回、贈与契約書を作成し、孫の親(親権を持つ法定代理人)が、小さい赤ちゃんに代わって贈与を受ける意思表示をすればOKとなります。孫の親とは祖父母からすれば息子か娘になるので、この辺りは問題なく整えられると思います。

現金で渡すより、孫の名義の通帳に記録が残る形が好ましいです。

日付、金額を明記した贈与契約書を作成する、通帳に記録を残すことが大切です。

②生前贈与を複数人から受けるケース

贈与税は、贈与を受ける側が納税します。祖父母から孫が贈与を受ける場合は、孫が課税されて納税します。それが、年間110万円の基礎控除額以内であれば非課税となります。

これを踏まえての、注意するケース

孫の祖父母は両親の親となるので存命であれば4人います。もし、この4人が打合せ無しで、それぞれ100万円を同じ孫に贈与すると、その孫は400万円の贈与を受けることになります。

贈与契約書を作成し、通帳に記録が残っていれば、逃れられませんね。

孫としては年間110万円を超えるので、課税されます。

贈与する側が複数人いる場合は、金額などを事前に把握しておくと良さそうですね。

まとめ

生前贈与について、孫への贈与の視点でご紹介しました。

ポイントは

  • 生前贈与の範囲を知る
  • 相続を1回飛ばすメリット
  • 贈与税の対象となる注意点

相続について考えるときに、生前贈与も手段の一つにしてください。

また、相続・贈与に関するルールは、これからも変更されることが予想されます。持ち戻し期間も3年から延長される可能性もあります。いずれにしても、現状でできるだけ対策をしていきましょう。

毎年の税制改正大綱のチェックもお忘れなく。

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