成年後見制度とは?「法定」と「任意」があります

成年後見制度とはなんでしょうか?言葉は聞いたことがあるという程度でしょうか?

Q 成年後見制度とは?
A 認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は、不動産や預貯金などの財産を管理したり、身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また、自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい、悪質商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し、支援するのが成年後見制度です。成年後見制度には、大きく分けると、法定後見制度と任意後見制度の2つの制度があります。
※法務省のホームページより

このような解説になります。イメージとしては、親を心配して成年後見制度の利用を検討するということでしょうか?

認知症を心配して・・・ということであれば、老親のことになりますよね。

知的障害、精神障害を心配して・・・ということであれば、残される障害のある子どもの心配も含まれます。

誰もが対象になる「成年後見制度」、そして「法定」と「任意」の2種類を確認していきましょう。

成年後見制度は2種類

成年後見制度には、「法定後見制度」「任意後見制度」の2種類があります。それぞれ、目的や権限、後見人の決め方などが異なります。あなたのご家族にはどちらが向いているのでしょうか?確認していきましょう。

任意後見制度とは?

本人の判断能力に問題が無く、この先の認知症になってしまい判断能力が低下するリスクに備えて、ご自身で後見人を決め、権限を決めることです。

ざっくり言うと、「認知症になって分からんようになったら、あんたに頼むわ!」ということです。

お金の管理などを任せることになるので、自分がしっかりしているうちに信頼できる人にお願いすることになります。ご家族になることが多いと思います。

本人が判断能力がしっかりあるうちに「任意後見制度」の手続きを進めます。つまり、「認知症対策」「事前準備」です。

法定後見制度とは?

判断能力が低下して、お金の管理や契約行為ができなくなった人に対して、家庭裁判所が選定した成年後見人を本人を支援するのが、法定後見制度です。

任意後見制度との大きな違いは、後見人を本人ではなく家庭裁判所が選任することです。後見人を決める判断能力が無いとされるからです。

法定後見制度には、「後見」「保佐」「補助」の3つの制度があります。

後見保佐補助
対象となる人判断能力が欠けているのが通常の状態の方判断能力が著しく不十分な方判断能力が不十分な方
後見人の権限財産に関するすべての法律行為申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める同左
後見人が取り消せる行為日常生活に関する行為以外の行為借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、新築・改築・増築などの行為
家庭裁判所が審判で定める特定の法律行為
借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、新築・改築・増築などの行為
申し立てができる人本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長など同左同左
※法務省ホームページより

表の通り、左側の後見が認知症を発症している状態であり、保佐、補助と程度によって異なります。

法定後見人は、家族、親戚など身内ではなく、法律家などがなる場合もあります。身内に適任者がいない場合や揉めることが予想される場合は、家庭裁判所が法律家を選定します。

「法定」「任意」比較表にまとめると

法定後見制度任意後見制度
制度の概要本人の判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所によって選任された成年後見人等が本人を法律的に支援する制度本人が十分な判断能力を有する時に、あらかじめ、任意後見人となる方や将来その方に委任する事務(本人の生活、療養看護及び財産管理に関する事務)の内容を定めておき、本人の判断能力が不十分になった後に、任意後見人がこれらの事務を本人に代わって行う制度
申し立て手続き家庭裁判所に後見等の開始の申立てを行う必要①本人と任意後見人となる方との間で、本人の生活、療養看護及び財産管理に関する事務について任意後見人に代理権を与える内容の契約(任意後見契約)を締結
→この契約は、公証人が作成する公正証書により締結することが必要
②本人の判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所に対し、任意後見監督人の選任の申立て
申し立てできる人本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長など本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見人となる方
後見人の権限制度に応じて、一定の範囲内で代理したり、本人が締結した契約を取り消すことができる。任意後見契約で定めた範囲内で代理することができるが、本人が締結した契約を取り消すことはできない。
後見監督人等の選任必要に応じて家庭裁判所の判断で選任全件で選任
※法務省ホームページより

「制度の概要」にあるように、認知症の発症前か発症後で大きく異なります。

「任意」か?「法定」か?早めの検討が重要

パッと見た感じ、家庭裁判所が決める法定後見人より、本人が決めることができる任意後見人の方が、本人に寄り添った対応ができそうだなと感じると思います。

いずれにしても、元気なうちに検討する必要があります。出来るだけ早い時期からご本人と相談できるといいと思います。

本人が元気なうちは、本人も家族も何も心配しませんから問題意識はありません

本人がちょっと気がかりなことが増えてくると、本人も家族も何か対策した方がいいのかな?と問題意識が芽生えてくる時期です。

そうこうしているうちに認知症の症状が出てくると、もう対策はできずに法定後見制度を利用するしか方法はありません。

そのことが分かるデータがあります。

※厚生労働省ホームページより

任意後見が良さそうだなと考えていてもタイミングを逃すと、結果的に法定後見となります。つまり、本人が判断能力のあるうちに、成年後見制度を理解すること、家族と相談しておくことが重要なポイントとなります。

また、遺言書も同じようなことが言えますが、準備を進めようと話を持ち出すと「縁起でもない」「財産のためか?」というようにタブーな問題と取られてしまうかもしれませんが、問題を先送りにして認知症が発症してしまっては結局、本人の不利益になってしまいます。

まとめ

成年後見制度の利用については、家族によって事情が異なります。このやり方がベストです!みたいな方法もありません。

ただ、早めの検討、相談で、選択する方法が多いのは確かですし、先送りにして選択肢が無くなっていくことを避けたいと考えます。

今回は、成年後見制度について解説していきましたが、「家族信託」という選択肢もあります。家族信託については別の機会に解説していきたいと思います。

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