「NISAやiDeCoって、損するんですよね?」
相談の前に雑談をしているときに、こんなふうに聞かれることがあります。
最近はテレビやネットでもよく見かけるようになって、「やってみようかな」と考える方が増えてきました。
でも同時に、「なんだか怖い」「損しそう」という不安もつきまとうようです。
正直に言うと、その気持ち、すごくよくわかります。
ただ実は、この「損する」というイメージ、ちょっとした誤解なんですよね。
今日はそれを、「お弁当」に例えてお話ししてみたいと思います。
「このお弁当、まずい」って誰のせい?
ちょっと想像してみてください。
お昼にお弁当を買ったとします。
食べてみたら、味付けが濃すぎて、あまりおいしくありません。
そのとき、きっと「このお弁当、まずいな…」と思いますよね。
でもよく考えると、まずいのは「中身のおかず」であって、「お弁当箱」が悪いわけじゃありません。
お弁当箱は何も悪くない。
当たり前のことなんですが、ここが大事なんです。
実は、NISAやiDeCoを「損する制度だ」と思ってしまうのも、これと同じ構図なんですよ。
NISAやiDeCoは「お弁当箱」です
「NISAやiDeCoで損をする」と思っている方は、「制度そのもの(器)」と「その中で運用する商品(中身)」を、ごちゃまぜにしてしまっているんですね。
整理してみましょう。
お弁当箱 = NISA・iDeCo(制度)
運用益非課税という保温機能がついた弁当箱のように便利な器(制度)です。しかもiDeCoは掛け金が所得控除にもなり、ますます優秀な器なんです。この箱そのものは、あなたのお金を守って、増やすお手伝いをしてくれます。
おかず = 投資信託や株式(商品)
箱の中に何を詰めるかは、あなたが決めます。リスクが高めのものもあれば、比較的安定しているものもあります。
NISAやiDeCoというのは、あくまでも「器」なんです。その中に何を入れるかは、また別のお話です。
たとえば、NISA口座を作ったからといって、必ず株を買わないといけないわけじゃありません。iDeCoも同じで、定期預金みたいな安全なものを選ぶこともできます。
幕の内弁当みたいに、いろんな種類を入れてもいいし、唐揚げ弁当みたいに種類を絞るということもできます。どんな弁当にするのか?どんなポートフォリオにするのか?これは自分で決めることができます。
リスクを取って、リターンを求めるのか、そうではないのか。
つまり、「制度を使う」ことと、「リスクをとる」ことは、イコールじゃないんですね。
じゃあ、何が「損」だと思われているの?
「NISAやiDeCoで損する」と心配している方の多くは、「元本割れ」のことを気にされています。
元本割れというのは、投資した金額よりも、戻ってくる金額が少なくなってしまうこと。確かに、投資信託や株といった商品を選ぶと、相場が下がったときに元本割れすることもあります。
でもこれは、「選んだ商品(中身)」の話であって、「NISA・iDeCoという制度(お弁当箱)」のせいではないんです。
むしろ、同じ商品に投資するなら、税金が安くなるNISAやiDeCoを使ったほうが、普通の口座で投資するよりずっとお得なんですよ。
お弁当で言うなら、「保温機能のあるお弁当箱」を使えば、おかずが冷めにくくておいしく食べられますよね。でも、おかず自体がまずかったら、温かくてもまずい。それだけのことなんです。
FPとして伝えたいこと
私がお伝えしたいのは、この3つです。
1. 制度を使うかどうかと、何を選ぶかは別のこと
「NISAやiDeCoを始める」ことと、「リスクの高い投資をする」ことは別です。制度を使いながら、自分に合ったものを選べば大丈夫です。
2. NISA・iDeCoという器は、税金が安くなる分お得
同じ商品に投資するなら、税金が安くなる器を使わないのはもったいないですよね。どちらも運用益に税金がかからないし、iDeCoだとさらに掛け金が所得控除になるので、その分税金が戻ってきます。
掛け金、投資額の上限は設定されているので、その範囲でということになります。
3. 大事なのは「中身をどう選ぶか」
制度を使うかどうかを決めたら、次は「何を選ぶか」を考えましょう。自分がどれくらいリスクをとれるか、いつまで運用するか、何のために貯めるのか。そういうことに合わせて商品を選ぶことが大切です。
まとめ
「NISAやiDeCoで損をする」という誤解は、制度そのもの(お弁当箱)と、その中で選ぶ商品(おかず)を、ごちゃまぜにしてしまっているから生まれるんですね。
お弁当がおいしくなくても、お弁当箱が悪いわけじゃありません。同じように、投資で損をしたとしても、それは選んだ商品の問題であって、NISA・iDeCoという制度のせいではないんです。
制度そのものは、税金が安くなるという大きなメリットがあります。大切なのは、その器の中に何を入れるか。つまり、どんな商品を選ぶかなんです。
もし「自分はどんなお弁当を詰めたらいいのかな?」と迷ったら、無理のない金額から始めてみたり、専門家に相談してみるのも安心ですよ。
Wrote this article この記事を書いた人
福田 智司
▶独立系ファイナンシャルプランナーとして、相談業務、セミナー講師などで活動しています。 ▶FBCラジオ ラジタス 第一木曜日 10:50~ 「FPふくちゃんのお金に関するエトセトラ」レギュラー出演中 福井で唯一?のラジオFPです ▶FPでIFAというポジションを活かした相談が得意 節約だけが家計見直しじゃない!を念頭に置いた相談を心掛けています。 ▶法人向けに企業型確定拠出年金の導入サポートを推進しております